この記事は、Mastodon Advent Calendar 2017 の、16日目の記事です。
昨日(15日目)は、らりお・ザ・㉅㊛の?然㊌ソムリエさんのMastodon が普及しつつあるけど、元 GNU Social 勢として思うこともありましてでした。
こんにちは。地理交通系インスタンス「まちトドン」管理人の にし (@westantenna)と申します。
この記事では、小規模インスタンスの7ヶ月余りを振返りつつ、来年の抱負を記します。
当インスタンスは、ホスティングサービスmasto.hostで運用しておりますので、 この記事では技術的な話はありません。数年後に見返した際に意義あるものとなるように意識して書きました。
マストドンとの出会い
私とマストドンとの出会いは、Twitterでマストドンの話題を目にしたことがきっかけです。Twitterにそれとない欲求不満を感じていた私は、すぐに飛びついたのが2017年4月11日の深夜。socialや、にるぬ(nil.nu)ちほー、結局爆死した初代jpに登録して、「祭り」を楽しみました。「federationの訳は連邦か連合か」「ゴールデンウィークは越せるのだろうか」「Twitterと共存できるのか」「個人が運営するところは怪しい、企業運営のところに登録した方が良いのでは」などという話が飛び交っていたのが思い出されます。
先の見通せなさこそ面白い
ご承知の通り、マストドンはゴールデンウイークを無事超えることができました。そして、運営母体が世間的な定規で「しっかり」したところでは、pawooやニコフレ、いちくらのような、ある程度の数のアクティブユーザーを獲得できたところを除き、死んだり過疎に陥りました。
先日、julika(エキサイト運営)が年内のサービス停止を発表したことは記憶に新しいところですし、私が勝手にライバル視していたchakudon(仮力運営)は開設時からバージョンアップが一度もされておらず、過疎ってしまっています。18禁を前面に押し出し多くの登録者があったインスタンスは予告なく死に、有名な実業家の名を冠したインスタンスは証明書切れで、こちらも死んだも同然です。
このような予想が当たらない(良い意味での)不確実性、企業が弱く個人が前面に出てくる点はマストドンの魅力であると感じています。
運命の「ツイート」
話を今年の春に戻します。
2017年4月22日、現在まちトドンを活用いただいている鳴海行人さんがツイッター上で、マストドンのことに言及しました。全ての始まりです。
こういうの、交通やまち関係でも作ると面白いのかなぁ
— 鳴海行人 (@mistp0uffer) 2017年4月22日
このツイートに背中を押され、インスタンス名を彼が編集長を務めているwebメディア「matinote」にあやかり、「まちトドン」と決めました。matitodon.comというドメインをノリで取得し、勢いでVPSも借りました。
余談ですが、今現在、まちトドンは「地理交通系インスタンス」と名乗っていますが、「まちトドン」という名前がはじめにあったので、どのようなインスタンスだと性格付けすればいいかという点は色々と悩みました。いっそのこと、「都営バス」とか、「地下鉄」、「再開発ビル」くらいにまで絞った方が良かったのかも、とも思いましたが、それはそれで誰も来ないような気もしますし、気軽にトゥートできなくなって過疎ってしまう危険性も高そうで、なんとも難しいところです。他のインスタンスでこのような悩みを抱えているところはそこまで多くなさそうな気もするので、私の趣味の範囲が捉えどころのないというか、そういうこともあるかもしれません。
VPSは無理だった
早速、インスタンスを立てるために、手探りでサーバーの設定を進めていきますが、いままでコンソール画面を全く扱ったことの無かった私には難しすぎることでした。いくらスタートアップスクリプトや多くの解説記事があったとはいえ、WordPressをレンタルサーバーに設置するのとは難易度が桁違いなのだと感じました。1週間と4,000円程度を費したところで、あきらめることにしました。
もし仮に、奇跡的に自前でマストドンインスタンスを立てられたとしても、アップデートのときに躓いていた気がします。サーバーを扱う困難さを痛感できたわけで、まあ悪くはない経験だったのかなと言い聞かせることにしています。
その一方で、サーバーは使えて、絵も描けて、言ってることは面白くて、という凄い方々のトゥートが連合タイムラインを駆け抜けていきます。私がマストドンを離れられない理由の一つに、様々な方面で活躍する凄い方々がいるという点もあるのでしょう。
ホスティングサービスによってインスタンスを開設
インスタンスを立てたいが、自前では立てられないとなると、ホスティングサービスに頼るしかありません。現在、マストドンインスタンスのホスティングサービスは有名なところで3ヶ所あり、下表に示します。
サービス名 | サービス開始日時 | マストドンアカウント |
---|---|---|
masto.host | 4月24日 | Hugo Gameiro |
ムトー★無料マストドン | 5月2日β版、6月19日正式版 | ムトーちゃん |
Hostdon | 6月13日β版、9月17日正式版 | Naf , Hostdon公式アカウント |
この表から分かる通り、この時点ではmasto.hostしか選択肢はありませんでした。英語が全然できないのでとてもおそるおそる申し込みをする前に、PayPalのアカウントを作りました。ネット経由の決済にもかなり疎かった(今でも詳しい訳ではない)ので、とてもためらわれましたが、なんとか準備を整えて申し込みをしました。
すると、時間をおいてHugoさんからDNSの設定のメールが届き、それが終わって連絡するとインスタンスが立てられ、あなたのアカウントを管理者にするかに教えてとメールが届いたので、作ったアカウントを教えて、完了、という流れでした。途中、英語が通じ合っていないような気も若干しましたが、たぶん気のせいでしょう、ともかく、4月29日の深夜、無事にインスタンスを立てることができました。
masto.hostの使い心地
m.toのインスタンスは、独自のカスタム機能が提供されていますが、masto.host
は、いわゆるバニラの状態の状態で提供されています。
サーバーをホスティングサービスしているのは、OVH社とのこと。どうやらイギリスにあるようです。今までのところ、サーバーの不調は細かいものを含め3回あったと記憶していますが、迅速に対応いただき、サービス品質はとても満足しています。
若干、トゥート時の反応や画像のアップロードが遅い気のですが、サーバーの性能というよりは距離的な問題な気がします。サーバーの引っ越しは考えるだけでも面倒臭そうです。
現在のところ、AndroidのクライアントアプリであるSubwayTooterのみ、画像の解像度をアプリ側で落としたうえでアップロードする機能があります。少しでも快適にご利用いただけるよう、まちトドンではこれをお勧めすることにしています。
masto.hostとm.toでは、ユーザー数を値段の基準としています。現在のところまちトドンは登録ユーザー数が57人ですが、定期的にログインしているユーザーは半分以下、そのうち定期的にトゥートをしているユーザーはそのまた半分程度のようです。ユーザー数は分かりやすくはあるものの、インスタンスの活気や負荷の大きさには結び付くとは言えないというのは、分散SNSフォーラムの流速順マストドンインスタンス一覧を見ることでもそれとなく感じられるかと思います。一方、Hostdonはsidekiqの数を値段の基準としており、こちらのほうが納得のいく利用金体系ではないでしょうか。
一体あとどれくらい規模が大きくなったら、プランを上げなくてはならないのかは、知っておきたい気もするような、しないような、というところです。
entyの設置
インスタンスを設置してから、確か2週間後くらいにentyを開設しました。まずはnullkalさんが使い始めたところを、それに加えて他インスタンスの管理者もentyで寄付を募っているのを見て、私もあとに続くことにしました。
維持費用
せっかくなので、ここでまちトドンの維持に、かかっている費用について話題をそらします。
直接的にかかっているのは、ホスティング費用(5ユーロ)とドメインの費用のみであり、足し合わせると1ヶ月あたり750円~800円程度となります。他のVPSによって運用しているインスタンスと比べると、規模の差を考えてもとても安いようです。インスタンスを立てたい人には、費用の面、手間の点両方から考えると、サーバーの運用をある程度は目的としていないのならば、ホスティングサービスを利用する方が楽だろうとアドバイスしたいです。
インタビューを受ける
2017年7月の某日、このインスタンスを立てるきっかけを与えてくれたmatinoteの鳴海さんにインタビューしていただき、それに関連して3つの記事を書いていただきました。
【インタビュー】「やったほうがいいなと思ったことは一気にやってしまいます」-デザインと交通・まちの交点(2017年7月17日配信)
【ツール】まちの情報交換にピッタリのSNSが現れた!?新興SNSマストドンを知ろう (2017年7月20日配信)
【ツール/インタビュー】「マストドンはオープンソースで拡張性がある」! 新興SNSマストドン利用者対談 (2017年7月23日配信)
マストドンの存在を広く知らしめることにはなったでしょうが、特に大きな流入に繋がったわけではありません。
pawooでの大規模流入を見ると、いずれも凍結や著作権の問題などで引き起こされており、必要に迫られて起きたことと言えるのかもしれません。一方、matinoteの読者が主に使っているのは(根拠はあまり無いけどたぶん)twitter、次いでfacebookであり、私のような趣味者から、仕事でまちづくりやまちおこしに関わる人、大学教授に至るまで、幅の広いコミュニティーが形成されています。特に問題も無く楽しくやっているのに、どこの誰だか分からない人が数人しかいないような、黒いSNSにアカウントを作ろうと思うのは、それなりの物好きでしょう。
一時期は、全体的に黒い(明度の低い)UIが、新規の登録を遠ざけていて良くないのではないかと考えていました。しかしながら、マストドンが他のSNSと違うのはローカルタイムライン、連合タイムラインがあることであり、やみくもに人が増えればいいというわけでもありません。その案配については来年も引き続き議論が交わされることでしょう。
wikiの設置
7月23日には、マストドンのインスタンスを網羅したwikiなどに触発され、「まちトドンwiki」を設置しました。
システムとしては、マストドン色にカスタマイズしたDokuWikiです。オープンソースのwikiシステムの中で検討し、PukiWikiはモバイル対応が十分でない点、MediaWikiはインストールが難しそうだったために、この選択となりましました。
8月から9月頃までは、まちトドンの中で仮想鉄道の鉄道ダイヤを公開することが流行り、そのダイヤグラムの公開と受渡しの場として使われました。他のインスタンスと比較しても、珍しい動きだったかもしれません。
ハッシュタグ
wikiの設置と同時期の7月28日、まちトドン独自のハッシュタグを、はじめて定めました。以後、少しずつ増えたり、使われ無くなったりと変化して現在に至ります。
これは、マストドンはトゥートの検索が(あえて)しにくいので、タグを積極的に活用すべきではないかという考え方が広がっていたことを受けた動きです。タグの難しいところは、使わないとわざわざタグを定めた意味がないですが、うっかり忘れやすいということだと思います。一部のインスタンスでは、投稿フォームの下に、タグの一覧を表示していますね。
現在も形を変えて時々話題となりますが、タグはどれほど今後も使われるのか、また、togetterのようなトゥートをまとめて一覧にするサービスが提供されるのかは、いちユーザーとしても、気になるところです。
オフ会の実施
1回目を名古屋で、2回目を大宮で、それぞれ9月と10月にオフ会を実施しました。街中を歩き続けたり、地図を囲んで話したりという一般的なオフ会とはかなり違うものになったような気がしました。行程がちょっと過酷だったかもしれませんね……。
中国語圏との交流
9月の半ばから、微博の規約変更に影響されて、中国語圏のユーザーが増えました。
まちトドンとしてはあまり関係がないかと思っていたところ、10月2日に「(海峡交通トゥート(海峡交通嘟嘟))[https://m.hxbus.net/about]」さんを発見しました。中国福建省で活動する交通愛好者の団体、海峡交通圏が運営しているインスタンスです。
言語の壁、金盾の壁を若干感じつつ、悩んだりもしましたが、弊インスタンスの連合タイムラインに国際色を与えてもらっています。
一時期よりだいぶ落ち着いたとは言え、マストドンを利用していると中国語に限らず、日本語ではないトゥートをある程度は目にします。Twitterを使っていては、なかなか経験しにくいことだと思います。これは、連合TLの存在もありますし、インスタンスという区切り、アカウントごとの属性があることで、かえって見通しが効くようになっている気もします。
広報用アカウントの設置
10月19日には、広報用アカウント(インスタンス公式アカウント)を開設しました。
目的はいくつかあります。
- 私のアカウントと、インスタンスとしての顔を分離する
- 交通の写真をブーストすることで、内外のインスタンスを賑わうようにする
- 当アカウントはインスタンスの情報や交通の話題に限るので、各ユーザーのタイムラインの管理を助ける
マストドンバージョン2.0からは、新規にアカウントが作成されると、管理者(まちトドンでは私のアカウント)を最初からフォローすることになっています。何もフォローしないというのは設定できないようなので、その点からも公式アカウントを作る意義は以前より高まったといえるでしょう。
カスタム絵文字
10月19日にリリースされたマストドン ver.2.0.0により、カスタム絵文字機能が追加されました。
どのような絵文字を追加するか考えていましたが、11月1日、他インスタンスで鉄道の路線記号が幾つか追加されているのに追随し、私もいくつか追加しているうちに、せっかくだから全国の路線記号を徹底的に追加しようと思いました。11月12日、そのためには命名規則を定める必要性を感じて行動に移し始めたものの、管理人が多忙になり、着手できずに今日まで至ります。
記事公開時点では、12月25日頃に第一弾として関東圏の鉄道路線記号を50文字程度追加することを計画しています。今後も、第二弾、第三弾と、続けて行きますのでお楽しみに。
SideKiqの推移
私にはSideKiqのこのグラフの意味するところを全く理解できていないのですが、貼り付けておきます。7月から8月にかけて、上昇している様子が見て取れます。
まちトドンの今後
長々と話をしてまいりましたが、来年の抱負を述べて、この記事の〆とします。
昨日12月15日、成人向け雑誌コミックLOの公式アカウントがpawooに開設し、pawooの絵師を中心に大きく盛り上がりました。
思えば、twitterでの絵師凍結、微博からの流入もあり、マストドンにおける絵師を中心とするコミュニティーは、(対外的な広報力の弱さは指摘されていますが)相当に確固たるものになったと思います。
まちトドンとしては、交通へ、地理へと、その裾野を広げたいと思います。
具体的には
- 私がマストドンを使い続けること
- Tootmapを(勝手に)使いたおすこと
- 対外的な広告の意識を持つこと
- 新しいユーザーさんを歓迎する姿勢を持ち続けること
- カスタム絵文字を拡充すること
- 楽しいこと
※なお、Tootmapとは、wakinさん製作の、トゥートを地図上にプロットして表示する地図アプリで、アドベントカレンダー9日目の記事マストドンを楽しむためにやってみたあれこれに解説があります。
これを指針として、来年も引き続き運営して参ります。Ostatus改めActivityPubの世界は、年の瀬をも乗り越えて、来年も続いていきます。今後とも、まちトドンをよろしくお願いします。
なお、この記事への質問は、私のマストドンアカウントまたは、Quesdonまでどうぞ。
何だか面白そうということでAdvent Calendarに登録したら、すごい人たちに囲まれてしまい、(それと、コミケの準備とその他諸々が片付かず)オドオドしっぱなしですが、こんなもんで宜しいでしょうか……。
明日(17日目)は、THE BOSSさんのMastodon フロントエンド改造入門です。
マストドン関連のアドベントカレンダーへのリンク
- Mastodon Advent Calendar 2017
- Mastodon 2 Advent Calendar 2017
- Mastodon Advent Calendar 2017 (Qiita)
- mstdn.jp Advent Calendar 2017
- nico.friends Advent Calendar 2017
-
2017-12-16 初版
- 2017-12-17 誤字訂正、SideKiqのグラフを追加、17日目へのリンクを追加
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